ムチの良し悪し
ムチの良し悪しはその人の価値観や思い入れなんか
でも違い一概にどれが良いムチだなんて言えないが
そうとは言え、これからムチの購入を考えている人
や買い替えを考えている人に聞かれたときは、良い
アドバイスをしてあげたいという気持ちになる。

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そこで、私がこれまで技にこだわってムチと共に歩
んできた15年間でのお話と、私の目から見たムチの
現在についてお話ししようと思います。

私が始めてムチを手にしたのは16年前。それはアメ
リカ産のブルウィップでした。今はもう私の手には
ありませんが、それはパフォーマーがオーダーメイ
ドした手入れの行き届いた6ft(180cm)ムチでした。
手に取ると冷たく堅く、細く先端までのびた細かく
編み込まれたムチでした。それを借りてロウソクの
火を消す練習をしたのを覚えています。
友人のパフォーマーがバースデーケーキに差した
8本のロウソクを次々に消したのを見て感動しまし
た。それが私のターゲットムチ練習の始まりです。
次に手にしたのが的を絡め捕る為の12ft(360cm)の
ムチでした。これはオイルを入れる事無く使える安
い粗悪な4枚編みのものでした。それを壊れる度に
自分で修理し、バランスがとんでもないことになっ
てたのを長い間使っていました。今までで最も使い
づらいダメなムチです。でも、そのムチで練習した
おかげで、どんなムチもたいていのモノは扱えるよ
うになった。

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そこからは自分のパフォーマンスにはどんなムチが
必要かが分かるようになって来たので、それに合わ
せたムチを海外のメーカーにオーダーしました。
でも素材のことや作り方なんてわかんなかったから
「軽くて長く、シナリがこれぐらい」と絵を添えて
オーダーしてる状態で。言葉の壁なんかもあって
やり取りを含めると最終的には30万円を超えるムチに
なってしまい、それを手にするまでに1年なんてざら
でした。注文しても途中で投げ出すメーカーや、違う
ものを押し付けくるメーカーもありました。
そして次に手にするのが8mの4枚編みのブルウィップ。
これは軽くそれでいてムチを振ると伸びを感じるムチ
でした。それと同じタイプにこだわりいくつかの長さ
を変えたものを揃えました。6m、4m、3m、1.8mかな。

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そのムチで 軽い=遅い ではないという事に気付き
フォームの無駄を矯正しさらにスピードが出るような
フォームに行き着きました。それが現在のサイドアー
ムです。その頃にアメリカのテレビ番組が音速とムチ
の関係を取り上げることとなり、数人のパフォーマー
の中に私も選ばれムチ先の速度の測定に挑んだ。
科学と対決することでムチのスピードと伸びが何によ
って出来るかを知った時でもあった。私のムチの原点
でもあるパフォーマーが持っていたムチが、なぜに
堅く細くしっかり編みこまれたムチだったのかをここ
で理解した。

しかし、私が追求したのはスピードではなく正確さと
フォーム。いかに狙ったものを確実に捕るかであった
ため、私が使用したムチは4枚編みの16ftで水牛革で
できたブルウィップでした。 とても軽くそれでいて
速度に伸びを感じるものでした。それを用いて5m先に
つき挿したサーベルを、ムチで絡めて手元のサヤに入
れるといったパフォーマンスを行なっていました。

そして、私が次に取り組んだのがムチでのカット。
スイカ、バナナ、りんご、大根、木材、いろんなもの
を切りましたが、それに用いたムチに加えた特殊加工
については業務秘密です。

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そしてクラッキングブームが再び来た時にストックウ
ィップを手にしました。クラッキングに使用しました
が簡単すぎるという理由ですぐに飽きちゃいました。
でも、すごく良いムチで技を習得する為の原理を理解
するのに適しているムチだとおもいます。最近、また
嵌ってます。

そこからしばらくの間はムチを変える事無く安定した
が、アメリカのムチのイベントで知り合ったマーク
アレン氏が私のパフォーマンスを気に入ってくれたこ
とから、私に合ったムチを作ってくれることになり
雨の日のパフォーマンスや路面が濡れていても使える
ようにとナイロン製のムチで長さか20ft(6m)のものを
2本作成してくれました。
パフォーマーが作ってくれだけに使い勝手は良いのだ
が重い…これを使い何度かショー中に脱臼しました。
でも良いムチで今も現存してます。

こんな感じにいろんなメーカーのムチを手にしてきた
訳ですが、共通することに、どこも既製品は誰もがす
ぐに振りやすくするために手元を重くしてあります。
これは重さで振り下ろせるように、そしてムチ先を重
くしても手首への負担が軽くなるようにです。
これに比べると、オーダー品は価格も張りますが目的
に合った作りとなります。それもあって特殊な芸当が
できてしまったりします。

スポーツウィップ協会の合同練習会に参加した事ある
人ならば、練習会で両手に短いムチを持って一定のリ
ズムを刻んでいる人たちを見かたことがあると思いま
す。あれらがオーダー品で一般で売っている既製品と
は違い技の為に特化してつくられたものです。
協会以外の人では、ギネス記録を持っているダンテさ
んの使用しているムチも同じタイプで既製品とは違う
ものですね。



さてここからは一般的な話しです。
必ずしもではありませんが、こんなもんだと知って
置いてください。

●ムチの種類

・ストックウィップ
短距離から中間距離に適している。
クラッキングしやすい。コントロールもきく。
特例として釣竿タイプの長い物もある。
・ブルウィップ
短距離から長距離までこなす。
一般的なムチ。用途によって若干の形状が変わる。
・スネークウィップ
短距離。コンパクトに収納できる。やや扱いづらい。
クラッキングと、短距離のターゲット。

●ムチの長さ
クラッキングしやすい 5~6ftが初心者向け
ターゲットして楽しい 8~10ftが初心者向け 

●ムチにとって最も大切なシナリ

手元から先端にかけて、できるだけ真っ直ぐに
大きな円から小さい円になるように、途中ではじけな
いように流れてくれるもの。

手元のシナリ、これはどこを軸に振るかによっても変
わってきますが、おおよそを全体の長さと腕の長さか
ら計算で割り出すことが可能です。

●ムチの編み数

編み方によっても変わりますが、技を楽しむならば
4~8で十分。それから先は個人的なこだわりと鑑賞
目的ですね。
編み数が増えると堅くなる傾向にあります。

●ムチの編み重ね

芯として編むものや巻くものが増えることによってシ
ナリが堅くなったり、ムチが重くなったりします。

●ムチのつなぎ

長いものになると革をどこかで繫いで編んでます
この繫ぐときの作業が粗いと、そこのしなりが変わり
ムチ先に円を伝えるときに円が跳ねます。

●バランス

ムチの全体の重さの重心がどこにあるかで、振ったと
きの手への負担が変わります。また重さをどこに増す
かでムチ先の速度も大きく変わってきます。しかし
しなりとムチ先の重さには一定の基準となるバランス
があり、ムチ先の重さが自然なしなりを邪魔し円を手
前で開いてしまう事もあります。

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さて次に海外メーカーと国内メーカーについて少しお
話しましょう。

一昔前までは国内でムチを作られている人も少なく
また海外のムチを取り扱う代理店も少なく海外からの
直接の購入しか方法が無かったのですが、現在は状況
も変わりR.M.Williamsさんのように日本に直売店を持
つメーカーや、ジャグリング店を通じて購入できるも
の、また日本でムチを作って販売する店や個人も増え
てきました。
歴史を比べてムチの質を語る人もいますが、確かに
老舗は既製品にも一定の水準を満たしているが、創設
者が今も尚作り続けている訳でもなく歴史はそんなに
ムチの質自体には関係なく感じます。
現在海外では、それぞれのメーカーのムチを製作する
職人同士がさらなる向上のために海外の協会を通じて
交流を図り職人のネットワークを築いています。
スポーツウィップ協会では国内の職人さんたちをその
ネットワークに参加させるべく協会同士の国際交流を
現在進めている段階です。

さて、国内の職人さんたちのレベルはいかほどのもの
なのか? この質問の答えとなるかわかりませんが先日
テレビ番組の制作に協力したときのお話を少しばかし
しましょう。

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『ムチで音速を超える』この課題をクリアするために
は振り手の技術と、ムチ自体にも精度の高い要求が課
せられます。
今回、この実験の為に厳選された海外の有名メーカー
のムチ2種と国内のムチの職人さんに依頼したムチ2
種の合計4本のムチが用いられました。
海外の有名メーカーのモノは時間の関係もあってオー
ダーしても間に合いそうも無い事から既製品でした。
その4種のうち音速を超えた数値を記録したものは
国内産の2種でした。
これまでも海外でこの実験に立ち会ってきましたが使
用したムチどれもが記録しなかった時すらあった実験
です。そんな事からも国内の職人さんたちのムチづく
りの腕前が、精度を要求されても海外に引けをとらな
いレベルであるという事がお分かりいただけると思い
ます。
そして、この技術と実験結果は海外のムチ作りの職人
さんたちにとっても興味深いものに違いなく、これか
らの交流で互いに更なる進化を遂げてくれると考えま
す。

音速を超えるムチを作れたことがメーカーの良し悪し
ではないのですが、海外にも映画に使用されたムチを
作ったことで有名になったメーカーもあり、クラッキ
ング用のムチに特化しているメーカもあり、情報交換
も流通も進んだ現代において海外と国内で比較する事
自体がナンセンスな時代となってくることは間違いあ
りません。

私も既に国内のムチと海外のムチをその用途によっ
て使い分けてます。


私が今欲しいムチはと言いますと

コレクションとして加えたいムチではR.M.Williamsの
ストックウィップ。
ショー用にオーダーしたいムチは、メーカーは決めて
ませんが10ftのクラッカーの先まで円が維持できる
高精度のムチ。この購入ためにお金を貯めてます。

余談になりましたが、こんな話でも皆さんのムチ購入に
参考になってくれると嬉しいです。
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by kinosuke_otowa | 2009-02-06 04:11 | ディオの日記
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