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23日の夜 そしてマルソーとの思い出
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昨日のミナトミライでの大道芸、ラムがぐずってしまい夜のみ僕一人での出演となりました。

イベント出演時では絶対に許されない事なのですが…

なにを言っても4歳なのでしかたない事と言えばしかたない事、無理やり連れて行って大道芸が嫌いになっては困るのでこの日は連れて行くのを断念し、この事を伝えに僕一人で会場に向かいました。

会場で川原さんとカジャさんにこの事を伝えると快く許してくれました。そして、帰り際に川原さんが「あっ、Dioさん一人でも夜に帰ってきて!!(笑顔)そうじゃないとお客さん残念がるよw 待ってるからね」と一言。
この嬉しい心遣いに深々とお辞儀し申し訳ない気持ちで会場をあとにした。


<<< マルソーの他界… >>>

そして、しばらくするとこの気分を一転するような1本の国際電話が…

「Dioさん! 驚かないで聞いて。 マルソー(マルセル・マルソー)がたった今他界しました… 死因は本人の希望でシークレット扱いなのですが芸人らしい最後で幕を閉じました」

一瞬、声を失いました。
こんな時って、どんな顔してどんな言葉を言えば良いのか…いつも困ってしまう。

「僕、今日本だから葬儀には行けないけど、でも日本より冥福を祈ります。」と電話を切った。


<<< マルソーとの思い出 >>>

僕は幸運にも何度かマルソーと仕事をしたことがある。
彼の日本好きと仕事の不思議な縁あって、何度か彼とは年齢や国境の壁を越えいろいろなことを話した。

初めて出会ったのは、『21世紀の現代アートとパフォーマンス』と題付けられた国際フォーラム。お互いにゲストとして招かれ控え室を共にした時だった。
彼は無口で静かに控え室の窓から外を眺め佇む僕に興味津々の笑顔で話しかけてきた

「日本人ですか?(侍のゼスチャー)」

当時の僕はまだ尖ってて、パントマイムなんて古臭いといった勝手な思い込みから彼には全く興味が無く、その彼の偉大さすらどうでも良い事だった。
しかも、彼からのいろんな質問攻めと、パフォーマンスを見せてみろの攻撃に、若干嫌気が差していたぐらいだった。
しかもスタッフの差別待遇にも頭きてたなぁ~
そんなことから、あまり会話もなくその場を終えた。

なぜかそれからしばらくして、似たようなタイトルのイベントで偶然また顔を合わせた。

「オー。また会ったね。えーと名前は…」高齢でボケてんのかよ!?と思ったのだが

その時はさすがに少しだか彼の偉大な功績も知っていたので、こちらからいろいろ話を切り出してみた。会話が盛り上がり場が和んだところで、僕はこんな事を尋ねた

「観客は常に新しいものとその刺激を求めていく客が大半です。そんな客の前での仕事が入った場合、あなたはプロのエンターテイナーとしてその多くの人の喜びに答えるのか、プロのアーティストして自分の表現に拘り理解者だけを引っ張っていくのかどっちですか? 僕はこれについて迷ってます。前者をとった場合、どうしても練習に費やせる時間の関係で浅いパフォーマンスとなってしまう。後者をとった場合、深いものはできるだろうが客の飽きや、好みの違いによりしだいに客は減っていくのを感じる…」

今考えると、20代で名も通ってない、ただ変わった事ばかりして注目を集めただけの日本人が馬鹿げた生意気な質問をしたもんだと自分自身が恥ずかしい。

彼はそんな僕に、これっぽっちも嫌な顔せず気さくにいろいろ話してくれた。

相当の話好きらしく、いろいろ話してくれたのだがその中で

「…君は考え違いしている。パフォーマンスの深い浅いや、客の判断を気にしたり、それを考えて演技するのではないんだよ。客を一体化する空間をつくりだし、そこで客に自分の見せたいものを伝える。ただそれだけで良いんだよ。…見たくないものに見せる必要も無くそれを理解しようとしないものにはどんな手法をもってしても理解させる事はできない。エンターテイナー、アーティストなんてそんなものは観たお客が勝手に判断すれば良いんだ。パフォーマンスの深い浅いなんてものも、客はそれを観に来てるのでは無い!! そんなのは嫌でもやっているうちについてくるよ。5年続けたら5年続けた芸、10年続けたら10年続けた芸、それは当たり前のことでどんなにあせってみても1年で10年続けた芸をできるはずがない。耳にするのはただのコピーだよ。そんなのに惑わされちゃいかん。本質だけを見ろ。それが欲しいならただ毎日続けるだけなんだよ。もう1つ大切なことは、常に自分を心を燃やし続ける事。」

「自分を心を燃やし続ける事とは…?? 」と問い返すと

「恋だよ(笑)」と笑い、辛気臭い雰囲気を一転させられた。



<<< マルソーへの感謝 >>>

その後、パフォーマーを続けていく中でいろんな葛藤があったが何度となく彼のこの言葉に励まされ道を見出せたことか…

いまでこそ、彼の偉大さとその器の大きさに尊敬し、ありがたい言葉の数々に感謝しています。
僕の友人に彼の最後の日本人弟子がいる。この時を同じくしてマルソーに多くの事を感謝していることだろう。

そんな事もあって、今夜のパフォーマンスは自分勝手ではあるがマルソーに捧げるものにしようと決めた。


<<< 再びミナトミライ >>>

ラムを寝かしつけて会場に向かうと川原さんが演技が始まったばかりだった。
演技中でありながらも川原さんは僕に気付き、待ってたよ!
と言わんばかりの笑顔を僕にくれた。
僕はそれに答えるために急いで準備を始めると、準備している僕を背に

「みなさーん。今月からここの仲間に加わったパフォーマーでDioさ

んって人がいます。彼がこれから皆さんがあまり目にしたことのないパフォーマンスを披露しますから、この後も帰らずに見ていってください!!」

とお客さんに言ってくれている、なんとも嬉しい心遣い…

そんなこともあっていろんな想いいが積もり目頭がジ~ンとしてきた。
準備を早々に済ませて、マスクでその顔を覆いお客さんにマルソーの他界の報告と、今日のパフォーマンスはその彼に捧げるものにさせてくださいとワガママなお願いをしショーを開始した。

偶然にも多くのパフォーマーさんが観に来てくれていて僕のワガママナショーに嫌な顔一つせず
「ワガママだなんてそんなの気にしないでいいんだよ!! 思うようにやれるのが大道芸の良いとこだから」と声を掛けてくれた。
嫌な事もたまにあったりもするけど、こんな温かい仲間に囲まれてパフォーマンスできるミナトミライはやっぱり最高です。

そんな9/23の夜でした。

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<<< 本日の早朝 >>>

一夜明けで本日の早朝5時。
昨日の罰ゲームにラムをたたき起こして、僕の朝のロードワークにお付き合いさせました。距離にして戸部駅からミナトミライまでの1往復。写真はその時の写真。
後ろの時計の時間に注目www


昨日のラムとのショーを楽しみにしていたみなさんほんとうに申し訳ありませんでした。

僕の自分勝手なパフォーマンスを許してくれたお客さん、ありがとうございました。

僕のパフォーマンスを期待して観に来てくれたパフォーマーの方、拍子抜けする内容ですみませんでした。アクロバットを目指しているサーカス学校卒の方、僕の手抜きのコツは真似しないで下さいw

(気付いたかな?!)

サーカスに合流する際にはゴマカシは通用しません。チェアーハンドはハンドのみでバランス維持を!!!

こんな僕たち親子のお手伝いを嫌な顔一つせずに協力してくれているスタッフの皆さん感謝しています。

そしてマルソーの冥福を祈ります。

これからもガンバリマスので、こんなドタバタした親子パフォーマーですが温かい目で応援よろしくお願いします。
by kinosuke_otowa | 2007-09-24 09:28
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